コラム

 公開日: 2015-10-20  最終更新日: 2016-02-25

H27年労働者派遣法改正法がが施行されました。

H27年労働者派遣法改正法が成立しました
―― 施行日:平成27年9月30日 ――

 労働者派遣法については、S61年に制定以来、数度にわたって改正がおこなわれ、種々変遷していますが、今般、H24年改正時の付帯決議等を踏まえ、再度の改正が行われ、この9月30日に施行されました。
 今回は、派遣労働をめぐる様々な状況について、確認をしたうえで、今回の法改正の概要について、解説いたします。

Ⅰ.派遣労働をめぐる状況
1.派遣労働者は、全雇用者のうち、どのくらいの割合ですか?
⇒ 全雇用者の約2%、非正規雇用労働者の中では約6%となっています。 
                               <H26年度平均>
区分雇用形態労働者数(万人)全体比率(%)非正規中の比率
正規正社員3,278    62.6   ―――― 
非 正規
合 計 1,962    37.4 100.0
パート       943    18.0  48.1
アルバイト   404     7.7  20.6 
派遣       119     2.3   6.1
契約社員   292     5.6  14.9
嘱託       119     2.3   6.1
その他    86     1.6   4.4

 2.派遣労働者は増えていますか?減っていますか?
   ⇒ 労働者派遣事業報告によれば、近年減少傾向です。
 年度 H20 H21H22   H23 H24   H25  H26
人員(万人)  202   157    145   137  135   127   126
増減      --   -45    -12   -8   -2   -8    -1

 3.労働者派遣事業には、一般と特定があると聞きましたが、その内訳は?
   ⇒ 全7.5万事業所のうち、一般(許可制)が24%、特定(届出制)が76%となって
います。改正法案は、これらを全て許可制とする内容です。

 4.派遣労働者の賃金は、他の雇用形態と比較してどの程度ですか?
   ⇒ 平均で見ると、正社員より低いものの、他の非正規雇用労働者(パート・契約社員
等)より、高い傾向にあります。
<雇用形態別の時給比較>            (H24年度実績)
雇用区分正社員派 遣契約社員等パート
時給(円)1,9211,351 1,198  1,026
比率 100% 70%  62%   53%

Ⅱ.平成27年労働者派遣法改正法の概要
  今般の改正法の趣旨は、次の通り、「派遣労働という働き方、およびその利用は、臨時
的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、常用代替を防止するととも
に、派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図る。」ことにあります。
 以下、派遣労働者を受け入れる派遣先の視点から、改正内容を概観します。

1.派遣労働者と派遣先社員の均衡待遇の推進
派遣先は、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、以下の点で配慮義務が課され、具体的な行動を行う必要があります。
<均衡待遇の実現に向けて配慮すべき事項>
・派遣元事業主に対し、派遣先の労働者に関する賃金水準の情報提供等を行うこと
・派遣先の労働者に業務に密接に関連した教育訓練を実施する場合に、派遣労働者にも
 実施すること
・派遣労働者に対し、派遣先の労働者が利用する一定の福利厚生施設の利用の機会を
 与えること
 ※配慮義務とは、目的の実現に向け、具体的に取り組むことが求められるものであ
り、努力義務よりも強い責務が課されるものです。

 2.期間制限のルールが変わります
   現在の期間制限、即ち、いわゆる26業務以外の業務に対する労働者派遣について、派
遣期間の上限を原則1年(最長3年)とするものを、見直します。
施行日以後に締結/更新される労働者派遣契約では、全ての業務に対して、派遣期間に
次の2種類の制限が適用されます。
(1)派遣先事業所単位の期間制限
      同一の派遣先の事業所において、労働者派遣の受入れを行うことができる期間
は、原則、3年が限度となります。
派遣先が3年を超えて受入れようとする場合は、派遣先の過半数労働組合等から
の意見を聴く必要があります。(1回の意見聴取で延長できる期間は3年まで)
   (2)派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位(いわゆる「課」
など)において受入れることができる期間は、原則、3年が限度となります。

例1:同じ人について、3年を超えて同じ課での受入れは×
例2:3年を超えても、別の人に替われば、同じ課での受入れは○
例3:3年を超えても、課が異なれば、同じ人の受入れは○
      ※以下の方は、例外として期間制限の対象外となります。
       ・派遣元で無期限雇用されている派遣労働者 
       ・60歳以上の派遣労働者  など

3.意見聴取手続
派遣の受入れの継続の是非について、労使間で実質的な話合いが行われることが重要です。
   ⇒ 事業所単位の期間制限による3年の派遣可能期間を延長する場合は、派遣先は、そ
の事業所の過半数労働組合等に対して意見を聴く必要があります。意見聴取は、期
間制限に達する1ヵ月前までに行うことが必要で、過半数労働組合等から異議が示
されたときは、対応方針等を説明する義務があります。

4.派遣労働者のキャリアアップ支援 
   (1)キャリアアップ支援に必要な情報の提供
      派遣先は、派遣元から求めがあったときは、派遣元によるキャリアアップ支援に
      資するよう、派遣労働者の職務遂行状況や、職務遂行能力の向上度合などの情報
を提供する義務があります。  
(2)雇入れ努力義務
   派遣労働者を受け入れていた組織単位に、派遣終了後、同じ業務に従事させるた
   め新たに労働者を雇い入れようとする際、一定の場合には、その派遣労働者を雇
   い入れるよう努めなければなりません。
(3)正社員の募集情報の提供義務
   派遣先の事業所で正社員の募集を行う際、一定の場合には、受け入れている派遣
労働者に対しても、その募集情報を周知しなければなりません。
   (4)労働者の募集情報の提供義務
      正社員に限らず、派遣先の事業所で労働者の募集を行う際、一定の場合には、受
け入れている派遣労働者に対しても、その募集情報を周知しなければなりませ
ん。

5.労働契約申込みみなし制度
   派遣先が次に掲げる違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先が派遣労働者に対
して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契
約の申し込みをしたものとみなされます。
(違法派遣について、派遣先が善意無過失である場合を除きます。)
<労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣>
①労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
②無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
③派遣可能期間を超えて労働者を受け入れた場合
④いわゆる偽装請負の場合
  ※期間制限違反について
   ・新たに設けられる事業所単位・個人単位の2つの期間制限のどちらに違反した場合
も、労働契約申込みみなし制度の対象となります。
   ・派遣元は、派遣労働者に対して就業条件などを明示する際に、期間制限違反が労働契
約申込みみなし制度の対象となる旨も明示しなければなりません。
   ・改正法の施行日(9/30)時点で既に行われている労働者派遣については、改正前
の期間制限が適用され、制限を超えて派遣労働者を使用しようとするときは、改正前
の労働契約申込み義務の対象となります。(労働契約申込みみなし制度の対象とはなり
ません。)

Ⅲ.まとめ
   H27年9月30日に施行されましたが、派遣社員を受け入れる一般企業としては、実
際、この法律が実効性を持つのは、3年後からです。
 ただ、今まで「専門26業務」という枠組みの中で、同じ派遣社員がもう5年も、10
年も働いている、という会社も多いかと思います。
 その人が本当はもう「派遣社員」という枠を超えて、「この人でないと」という存在感になっているのでしたら、正社員化するなど、何らかの対策を考える必要は出てきます。
 また、これを機に、「本当にその仕事は”派遣社員“にしてもらうのが適切なのか、自社でパート・アルバイト、契約社員を採るという選択肢はないのか」を再検討したらいかがでしょうか。
更に言えば、自社の事業の在り方を踏まえ、従業者構成はどうあるべきかなど、人についての専門家である社会保険労務士として、顧問先などに一歩踏み込んだ提案をしたいと考えています。
     
特定社会保険労務士   坂本 公則
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