コラム

 公開日: 2015-06-16 

マイナンバー制度は予定通り実施すべき

―― 公平・公正な社会保障・税の実現には不可欠な制度 ――

■マイナンバー制度は行政の効率化、国民の利便性向上、公平・公正な
社会実現のための社会基盤です
 5月に、日本年金機構で125万件もの個人情報(氏名、生年月日、住所、
年金番号)の洩洩が発覚したことにより、マイナンバー制度の予定通りの発足
が危ぶまれています。しかし、この制度は、後述のメリットを実現し、日本が
今後も先進国の地位を保持して行く上で必須の仕組みです。
情報セキュリティ対策等あらゆる手段を講じても、予定通り実施しなけれ
ばいけません。

 マイナンバー(社会保障・税番号)制度は、社会保障、税、災害対策の分野
で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の
情報であることを確認するために活用されるもので、行政を効率化し、
国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現するための社会基盤です。

 まず、行政の効率化です。マイナンバー制度の導入後は、国や地方
公共団体等での手続で、個人番号の提示、申請書への記載などが求め
られます。国や地方公共団体の間で情報連携が始まると、これまで相当な
時間がかかっていた情報の照合、転記等に要する時間・労力が大幅に
削減され、手続が正確でスムーズになります。

 次に、国民の利便性の向上です。これまで、市役所、税務署、
社会保険事務所など複数の機関を回って書類を入手し、
提出するということがありました。
マイナンバー制度の導入後は、社会保障・税関係の申請時に
課税証明書などの添付書類が削減される場合があるなど、
面倒な手続が簡単になります。
また、本人や家族が受けられるサービスの情報のお知らせを
受け取ることも可能になる予定です。

 最後に、公平・公正な社会の実現です。国民の所得状況等が把握
しやすくなり、税や社会保障の負担を不当に免れることや不正受給の防止、
更に本当に困っている方へのきめ細かな支援が可能になります。

 こんな結構な制度の導入が漸く実現しようとしているわけです。
しかし、企業で人事関係の業務に長年携わってきた私からすると、
何故、ここまで遅くなったのかと腹立たしい思いです。
どの会社でも共通だと思いますが、従業員を採用すると、
まず「社員番号」というものを付与します。
社会保険料の徴収は勿論、生命保険・損害保険料の控除、
購買品の月賦額の控除等給与計算には、必須のものであり、
広く、人事管理、福利厚生、安全衛生の管理など同一人物としての
紐づけには、不可欠のものとして活用されています。
常に、効率性を追求する企業人としては、当然の発想であり、仕組みです。

 ところが何故か、行政の仕組みとしては、導入されませんでした。
例えば、健康保険について、健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険、
それぞれに「保険者番号」は付されますが、各番号に一貫性がなく、健康
保険組合から協会けんぽに保険者が変わった場合、同一人であることの
確認は、氏名・生年月日・住所などの情報に頼らざるを得ません。
それだけ、保険者の変更には、煩雑な手続・添付書類が必要になるわけです。
 よく言われる、病院のカルテなども、保険者番号に一貫性がなく、また効率
重視・経費節減という意識が希薄なため、二重、三重の診療・投薬が行われ、
国民経済的に多くの無駄を発生させています。

 社会保険・労働保険の適用事業所逃れという問題もあります。
税務署の把握している事業所数よりも労働基準監督署・ハローワーク、
日本年金機構、健康保険組合の把握している事業所数の方が、
相当に少なく、本来、社会保険・労働保険に加入すべき事業所の
一定割合がが不当に加入を免れているものと思われます。

 公平・公正な徴税(納税)という観点でも、現状は、大きな問題が
あります。適切に課税するためには、適切に=正確に、国民の所得を
把握する必要がありますが、俗に「トーゴーサン」と言われるように、
所得の捕捉率が給与所得者=約10割、自営業者=約5割、
農林水産業者=約3割と公平ではなく、それがために、
所得税の比率は抑え、その分、消費税などの間接税の比率を増加すべき
などという本質からそれた議論が行われる程であります。

 老人医療や生活保護の問題を考える際、所得と資産の関係をどう整理
するかという問題もあります。高齢で働いていないので所得はないが、
資産は相当保有している、或は、所得がないということで生活保護を受けて
いる人が、日頃ベンツを乗り回しているといった事態をどう考えるかです。
現状では、所得はある程度正確に捕捉できても、資産は仕組みとして
全く正確には捕捉できない。

こうした問題のほとんどは、市町村役場(市役所)、税務署、健康保険組合、
労働基準監督署・ハローワーク、日本年金機構、各金融機関、各医療
機関等の有する情報が、有機的に連結する仕組みがないことに
起因しています。
マイナンバー制度の導入は、これらの問題を解決に導く大きな一歩となります。

■万難を排して、予定通りのマイナンバー制度の導入を
 これまで、マイナンバー制度に類似の仕組みとして「国民総背番号制度」や
「納税者番号制度」の導入が検討されたこともあります。
しかし、プライバシーの保護などの観点からの横ヤリが常に入り、
本格的な議論にはなりませんでした。
今回、ここまで検討が進んだのは、一つには、情報技術の発展により、
情報の連結の仕組みが一層進んだこと、更には、低成長下の超高齢化の
進展の中で、日本社会がこれ以上非効率・無駄を抱えていては世界に
伍していけないという背景があります。

 今般、日本年金機構での情報漏洩の発覚から、早速、「年金番号でなく、
マイナンバーが漏れたなら、更に影響は大きい。」と予定通りの導入を懸念する
声が大きくなっていますが、多少の時期の遅れは生じても、
万難を排しても制度の導入は推進すべきです。

 勿論、情報セキュリティの一層の強化、マイナンバーに係わる仕事をする人
全員への情報管理の意義の徹底、運用規程に違反した場合の罰則の強化
なども、必要です。特に、情報漏洩があったとしても、被害が拡大しないための
仕組みづくりなども求められるでしょう。

 大事なのは、「これこれのリスクがあるから新しい制度は導入しない。」
ではなく、「これこれのリスクはあるが、もっと大きいこれこれのメリットがある
のだから、リスクを最小限にする工夫をしつつ、とにかく導入しよう。」
という前向きの発想であり、決断です。

■平成27年10月以降、マイナンバーが通知されます
 平成27年10月以降、住民票を有する方に12桁のマイナンバー
(個人番号)が通知されます。外国籍でも住民票がある中長期在留者や
特別永住者などの外国人も対象です。
 10月の第一月曜日の5日で住民票に記載されている住所に
マイナンバー(個人番号)が指定され、それ以降、市区町村から住民票の住所
あてに「通知カード」が簡易書留で、世帯分まとめて封筒に入れられ郵送されます。
 マイナンバーは一生使うものです。マイナンバーが漏洩して、不正に使われる
恐れがある場合を除いては、番号は一生変更されません。

 マイナンバー制度の導入が、予定通りに進展し、所期の目的を果たし、
より公平・公正な社会が実現できるよう皆で盛り立てましょう。

以上 

 特定社会保険労務士   坂本 公則
E-MAIL:sakamoto-jksrj@kcn.jp
URL:http://www.sakamoto-jksrj.net

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