コラム

 公開日: 2014-09-04  最終更新日: 2015-09-07

本年度中小企業の賃金の引上げ状況に思う(1)

先日、経済産業省が「中小企業における賃上げ状況に関する調査結果」を発表しました。調査は、今年6月に全国の中小企業3万社に調査票を送り、7月23日までに10,380社から回答を得たものだということです。

少し長くなりますが、なかなか興味深い結果でしたので、今回は、その概要を紹介いたします。

【中小企業の6割が賃上げ しかし理由は「人材定着・確保」のため】

 ★賃上げ割合と賃上げの種類★

  賃金の引き上げを行った中小企業は、64.5%と、昨年度を大きく上回っています。一時金での引き上げが多いですが、ベア実施企業も35%以上あるという結果が出ています。

 ◇常用労働者1人当たり平均賃金の引き上げ(定期昇給を含む)の状況

  ・引き上げる/引き上げた 64.5%(平成25年度 56.8%)
  ・引き上げない/引き上げていない 34.5%(平成25年度 40.5%)
  ・無回答 1.0%(平成25年度 2.6%)

 ◇賃金を引き上げた企業におけるベースアップ又は賞与・一時金の増額の状況

  ・ベアのみ実施 15.3%
  ・ベア及び賞与・一時金増額実施 20.9%
  ・賞与・一時金増額のみ実施 27.1%
  ・そのほかの賃上げ(定昇など)実施 36.7%

 ◇ベースアップの引き上げ額

  ・8,000円以上 13.5%
  ・5,000~8,000円未満 22.0%
  ・2,000~5,000円未満 42.4%
  ・2,000円未満 22.2%


 ◇賞与・一時金の引き上げ額

  ・6万円以上 25.0%
  ・3~6万円未満 23.5
  ・1~3 万円未満 35.7%
  ・1万円未満 15.8%


★賃金引上げの理由など★

 しかし、中小企業の多くは、業績回復のためではなく、従業員の定着・確保のために賃上げをしたと答えています。「人手不足」の影響は賃金にも出ていると言えます。

 ◇平成26年度に賃金を引き上げる/引き上げた主な理由(複数回答)

  ・従業員の定着・確保 75.7%
  ・業績回復の還元 28.9%
  ・消費税率引き上げ 21.3%
  ・同業他社の賃金動向 15.9%
  ・税制面や支援制度による環境の整備 3.0%

 ◇平成26年度に賃金を引き上げない/引き上げていない主な理由(複数回答)

  ・業績の低迷 71.7%
  ・賃金より従業員の雇用維持を優先 33.1%
  ・原油・原材料価格の高騰 33.0%
  ・消費税率引き上げ 23.9%
  ・他社製品・サービスとの競争激化 17.8%

 調査では、その他に、「人材育成やモラルアップに関する問題」、「所得拡大促進税制の利用」なども、取り上げていますが、ここでは、割愛します。

 このように、アベノミクスによる景気振興策の成果もあり、本当に久しぶりに、「賃上げ」、「ベースアップ」、「人手不足による採用難」などという言葉が、新聞紙上をにぎわしています。

 日本経済は、「失われた20年」により2000年代前半から、リストラのあらしが吹き荒れ、賃上げどころか、賃下げ、ベースダウンが常態となりました。「従業員の定着・確保」が主たる理由とはいえ、ここにきて漸く、賃上げ・ベースアップが復活した、いやできつつあるのは、日本経済全体としても好ましい傾向と言えます。

 経済が安定的に成長し、「消費者物価の上昇(日銀の当面の目標は2%/年)が、持続する場合、実質賃金の維持・上昇のためにも、適度の賃上げ・ベースアップが持続されることが望まれます。

 この調査では、詳しく触れていませんが、賃金引上げ=賃上げと、ベースアップ、定期昇給とは、それぞれ違うものです。世間では、この三者(特に賃上げとベースアップ)を区分せず、混同した議論が行われがちですが、今後、再び「賃金の上昇」に焦点があてられる中で、三者を峻別し、正しい理解と運用を行うことが大切です。

 次回では、この点について、議論を深めたいと思います。

特定社会保険労務士   坂本 公則
E-MAIL:sakamoto-jksrj@kcn.jp
URL:http://www.sakamoto-jksrj.net

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社会保険労務士 坂本公則

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